ありふれた事件

www.arihuretajiken.com

【映画ベイビードライバー感想】雑でテキトーな映画。

カーアクション映画をほとんど見ない僕が、この映画を見に行ったのは、一緒に行くことになっていたいい感じの人が僕の提案した映画に難色を示しことと無関係ではない。「怖い話は嫌い」だそうだ。そこで、逆に提案されたのが本作「ベイビー・ドライバー」で僕はすごく興味をもった。だって監督はあのエドガーライトなんだもの。エドガーライトは「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホットファズ」といった、好きな人にはえぐるように嵌る名作映画を、サイモン・ペグとともに作ってきた人で、もちろん僕は大好きだった。

正直、上に書いた作品以外は追い切れていなかったけれども、偶然見つけた「エドガーライト」の名にテンションは上がる。同行者の感情も考慮しつつ僕は見に行くことを即決したんだ。

ここで「ベイビー・ドライバー」のあらすじ(シネマトゥデイより)

幼い時の事故の後遺症によって耳鳴りに悩まされながら、完璧なプレイリストをセットしたiPodで音楽を聴くことで驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪組織の逃がし屋として活躍するが、デボラ(リリー・ジェームズ)という女性と恋に落ちる。それを機に裏社会の仕事から手を引こうと考えるが、ベイビーを手放したくない組織のボス(ケヴィン・スペイシー)は、デボラを脅しの材料にして強盗に協力するように迫る。

 冒頭から早速始まる「脅威のドライビングテクニック」を駆使した逃亡劇は、僕が今まで見たカーアクション映画の中では一番だったし、おそらくその分野全体でも上位に入るんじゃないかなと思った。逃走に使われる車が「スバル」だったという身内びいきの感情があるにせよ、そんなマシンが全力を出した時に発するタイヤがこすれる音やエンジン音はたいへん気持ちの良いもので、これは、僕自身「カーアクション映画に対する見方を変えなきゃ」と感じるくらい最高だった。もう一つのテーマである音楽もまた良い。知らない曲ばかりだったけど、街中の雑踏や車の音が音楽のリズムに合わせて組み込まれていて、何だか「ショーンオブザデッドのパブでクイーンに合わせてゾンビをたたくシーン」を思い出して楽しかった。

んーーぐらいかな?

 全体的には1800円くらいのクオリティはあるのだけれど、全体的に作りがテキトーなのか見ている最中、頭の中で雑音が止まらない。

まず終始思うのが「ベイビー(主人公)、おまえそこまで運転上手くないよね?」ってこと。カーアクションシーンは3回くらいあって(少なくない?)、最高にかっこいいのは冒頭のシーンだけ。あとはだいたい逃走開始直後に他の車にぶつかって、いきなりピンチになってしまう。しかも理由はバック時の後方確認ミス。確かに「強盗犯が人を殺して動揺した」というのは分かるけれど、それは、僕レベルのドライバーが事故ってパニくった時によくやる凡ミスで、ようそれで二桁の強盗犯を逃がしてこれたな。

こんなんだから、後半の「徒歩で逃走を余儀なくされた主人公がようやく車に乗り込む!」っていう本来なら「さあ!これで無敵だ!」というシーンでも全然気分がアがらない。むしろ「慌ててるけど大丈夫?後ろ見て!後ろ!」と心配してしまう感じだ。まあ、案の定そのシーンでもバックで他の車にぶつかってすぐに徒歩逃走に戻るんですけど。

終盤に入ると殆ど運転もしなくなるし、クライマックスなんて比喩なしに車同士の「ぶつかり相撲」だから、結局最後までベイビーの天才的ドライビングセンスに全然説得力がないんだよね。それで良いんでしょうか?ドライブシーンがないと絵的にもさみしいよ。

 

あるいはこの映画は「ベイビーが精神的に自立・成長してベイビーじゃなくなる(=大人になる)」というのが本筋の物語なのかもしれない。
と、するとストーリーとか人物描写が薄すぎるんじゃないかしら。

ベイビーの里親と組織のボスを除くと大体の主要人物は恋人からメイン悪役まで、劇中時間で一カ月くらいの間に出会ったばかりのポッとでばかりで、しかも碌に描写もないから「え?なんで今そんなことした?」とみてる最中ハテナばかり出てくる。「株屋で凶暴」という文字面だけの設定を抱えて突如不死身になるメイン悪役、あれは一体なんだ。悪辣だった組織のボスが劇中時間30秒で何の前触れもなく「主人公を身を挺して守る聖人」に変わったのは笑ったからいいとして、特にひどいのはヒロインのデボラ。

このデボラ、犯罪に加担し警察からも強盗からも追われる身となった主人公に命がけでついていくんだけど、やはり知り合ってから一カ月もたっていない。「愛は時間じゃない」といっても、二人で合ったのなんてコインランドリーとカフェとレストランの3回くらいだよな?おそらくヤッてもいない。よくまあそれで…。

あげく、ラスト逮捕された主人公を弁護するために法廷に立ったデボラは彼との関係性を聞かれてこんな事をいう。

「私たちは友達で、それ以上になることを望んでいました」

恋人ですらなかったのかよ。いや、ほんと雰囲気に流されやすいのにも程があるっていうか、あぶねえぞマジで。

主人公も主人公で明らかに自分が反対すれば危険な賭けをしなくて済むっていう時に「いや、やろう!」とか奮い立っちゃうし。「全部お前のせいだ!」と悪役にののしられていたけど、その通りじゃん。

終始こんな感じでとにかくテキトー。人物みんなが映画を成り立たせるために一致団結しているような気がしてストーリーが全然腑に落ちない。主人公の成長なんて伝わってこないよ。

 

「じゃあじゃあ、音楽と映像のマッチングを楽しむ映画だったんだよ!」なんて話もあるけれど、じっくり見てみるとなんかリズムがうまく合ってないぞ。っていうか、どちらかというと「みんなが音楽に合わせて行動している」ようでかえって不自然。

 

こんな感じで、全てが雑でテキトーな話。個人的には主人公が借金を返し終わった時点で話が完全に終わっていて、それ以降は無理やり物語を動かしていたような気がする。

それでもまあ、2時間退屈はしないので見に行きたい人はあんまり考えずに見に行くといいですよ。